千歳マラソン

=出会い・快走・味覚=

東京都:ユッキーさん(2007.08.23掲載)


★その2

続いて翌週。

またもや寝不足だ。少し時間があったので、空港の近くのお気に入りのパン屋さんに向かう。

のんびりしていると友人からの電話。
待ち合わせ時間が少し早くなりそうとの事。急いで店のトイレで着替えてタクシーで移動する。

ツアーバスに乗り友人と二人のお姉さまと合流。今回は4人の楽しいツアーだ。
まずは明日走るコースをあらかた見るらしい。 思ったより車内にはご年配の方が多いのに驚く。みんなやる気満々と言う感じだ。

私は心の中で「先週私はコースの大半を試走しているんだ」と一人優越感に浸っていた。

ちょうど私有地あたりにさしかかったとき、急にバスが進まなくなった。
何でも鍵がかかっていて、前に進めないのだそうだ。あたふたする乗務員の人々。
 私も落ち着かない。 と言うのはこうめさんと友人と3人で、顔合わせがてら、軽く走る約束をしていたのだ。
その時間が迫っていた。

結局ユーターンできないため、そのままバックしてもと来た道を戻る事になった。
あまり時間がかからない事を祈るしかない。
ひやひやした。途中でユーターンできそうな場所にさしかかったが、車止めの丸太がたくさん並んでいて通れない。
それを何人かで移動することになった。
率先して立ち上がったのはお姉さまたちだった。
フットワークが軽い、ものすごいパワーだ。
後から聞いたのだが彼女たちはホノルルマラソンをすべて完歩した実力派だ。
さすがだ!

バスはユーターンし丸太を定位置に戻し無事スポーツセンターに到着。
少しお待たせしてしまったが同じクラブに所属している男性とも合流、こうめさんと再会。

打ち合わせも済ませ軽く走ってみる。 いい感じだ。
改めて楽しく走れるであろうことを確信する。
やっぱり先週練習しておいてよかったと想う。なんの不安も無い。

時々道々で私たちに「がんばってください」と声を掛けてくれたり、握手してくださった方がいて一瞬とまどった。

30日の北海道新聞で、取材を受けた効果なのだろう。
知らない方に直接応援していただくなんて始めての経験なので嬉しかった。

練習を終えホテルに向かった。

4人部屋でトイレと洗面所が二つもあり、畳部屋で落ち着ける広いお部屋だった。
まったく気がねせずゆっくりと過ごせた。
お姉さまたちが「なんでも言ってね」と言ってくださったので、お言葉に甘えゴミ箱の位置を聞いたり、タオルを掛ける場所は何処か教えていただいたり、お茶まで入れていただきました。

お二人は特に旅なれていて、てきぱきと行動が早い。
私がもたもたしていてもいやな顔ひとつしないで待っていてくださり友人とお二人の優しさを感じた。

夜のお食事は5人で居酒屋に行った。
明日のこともあるので、みんな控えめに飲んでいる。
本場のホッケは肉厚で美味しかった。
変わったところでは行者ニンニクの天婦羅が体に何となく効きそうな味がした。(まったく根拠なし)

締めの鮭茶漬けが心をほっとさせる。
やはり一人で食べるより、大勢で語らうのはまた楽しい。

寝る前に軽く友人にマッサージをして早めに休んだ。

翌日は曇り時々晴れ、張り詰めたような空気を吸い込んで眼がさめた。

やはりここは北海道なのだ、まったく透明度が違う。

友人は私より30分早く起きて、いつも大会前におこなっている朝のメニューを着実にこなしているようす。
私はストレッチをしただけだ。やはりフルを走るとなると違う、話しかけるのもはばかられる、私の知らないランナーの顔だ。
私は彼女のまねをしてお餅入りの味噌汁をいただいた。
何となく元気が出た。 脳細胞が単純だ。 少し休んでホテルを出る準備をし、フロントに荷物を預け、アップをしに出かけた。

ホテルの周りは昨日の静けさとはうって変わって、車が多くごった返している。
それだけ地元の参加者が多いのだろう。

友人とはスタート時間が違うため、こうめさんとバトンタッチしスタート位置に向かう。
さすがの私も緊張してきた。道すがらこうめさんの知り合いがたくさんいて激励してくださった。

 いよいよレースがスタート。 号砲とともにスタートした。

やはり2・3分は混み合っていてやっと歩ける感じだった。

自分の右側をややガードしながら徐々に進んでいく。

気になっていた砂利道は整備されているのか、先週より走りやすくなっていた。
雨の後に倒れていた木も無くなっていた。
相変わらず空気はいいが林道に入ると砂埃が少し気になった。
この大人数で走るので恐れをなしたか鳥の合唱は聞くことができなかった。

走りながらもたくさんの人たちが声をかけてくださった。
おかげで前半はペースを保ち快調に走れた。

こうめさんはやや緊張ぎみで前半はツッパリ感が少し感じられたが、後半は安定して走り易かった。

エイドではバナナも食べもちろん給水し、なんと始めてスポンジも取ってもらった。

何だかランナーみたいだと思った。
そうなのだ、私は一度も自分がランナーだと思ったことがない。
チャレンジャーだと想っている。
だから急にスポンジなどを持つと違和感を感じた。
スポンジは一流ランナーが取る物で、私などが触ってはいけないものと思っていたが、コースにいる以上は許されるのだ。
走るのが遅かろうが、速かろうが必要だと思ったら取ってもいいものなのだ。対等に扱ってもらえるのだ。
私にとっては新鮮な感動だった。

途中1箇所きつい上り坂があったのを記憶していたので、飛ばし過ぎないように注意した。
とにかく同じペースで走ろう、そればかり考えていた。

15キロ過ぎにペースがやや落ちてきた。
いつものことなのだ。
私にとって15キロ過ぎが魔の距離なのだ。
気が抜けるというか間延びしてしまうのだ。

林道が終わり一般道に入り、途中で信号待ちがあり、少し休めたのが良かったのか、ペースを戻すことができた。
練習で走った終盤のサイクリングロードに来た。
「ちょっと飛ばそうか?」と、こうめさんが言う。
残っているエネルギーを出し切ろうと思う。
もう終わってしまうのだから。

少し暑くなってきた。
日が出てくるのがもう少し前だったら、バテテいたかもしれない。

急にフルマラソンを走っている友人が心配になる。
そんなことを考えている場合では無い、とにかく今は私とこうめさんのレースなのだから。

後2キロともう少し。
とても苦しい。
何人か前半で抜かれた人を抜き返したのでちょっと気分がよかった。
苦しいながらも気持ちのいいゴールができた。

こうめさんが「最後は笑顔でゴール」と言っていたけれど、ひきつった顔だったかもしれない、でも楽しかった。

これもこうめさんのおかげだ。

タイムは2時間16分58秒だった。

メインステージでは自衛隊の方による太鼓演奏がおこなわれている。

一息ついて完走Tシャツと自衛隊の方がゆでてくださった熱々のジャガイモをいただいた。
これがまた美味しかった。
今だかつてこんな栗のような、甘みのある、香りのいいジャガイモは食べたことがなかった。
太鼓をBGMに一気に食べてしまった。
まさに大地の恵みって感じ。

そろそろ友人のゴールの時間だ。
こうめさんも逆走して応援してくださった。
私がゼッケン番号を覚えていなかったので分からなかった様だ。
2回会っているので顔を見ればわかるかと思ったが難しかったようだ。

友人は目標には届かなかったようだが楽しく走れたようだ。
何となくほっとする。

集合のバスの時間もあるのでお世話になったこうめさんとお別れをしてホテルに戻りシャワーを浴びバスに乗り込んだ。

物思いにふける間もなく慌ただしい。
また何時か何処かでこうめさんと会えるのが楽しみだ。
きっとすぐに会える予感がする。

バスで札幌に向かい中島公園の近くのビジネスホテルに泊まった。

夜はやはり5人で仲良く完走Tシャツを着て、クラブの仲間に紹介してもらった店に繰り出した。

今日はそれぞれに大いに飲んで食べた。

旬の刺身の盛り合わせとアスパラの炭火焼きが特に印象的だった。

おそろいのTシャツで写真を撮ってもらい良い記念になった。

東京に帰り家族がそれを見て、とても喜んで早速マイアルバムに貼ってくれた。

お姉さまたちはもちろんハーフを楽々完歩し、さらに友だちもできた様子。

なんと身の上相談まで聞いてあげたそうで、誰よりも楽しんでいたのはお二人かもしれない。

コースで倒れそうな人にはバナナをあげボランティアまでして大忙しだ。

いろんな楽しみかたがあるのだ。

特にお二人は人生を楽しく生きる天才だと思う。
常に何かをキャッチするアンテナを持っているのだ。

ホテルに戻って荷物を整理し入浴して少しおしゃべりして私のエネルギーは尽きた。

翌朝友人と軽くお散歩に出かけた。
朝の公園を歩くのも東京ではできない経験だ。
ラジオ体操をする人、犬の散歩、もちろん走っている人もいる。
お花がいっぱいでこれぞ公園という感じだった。

その後私にしてはやや抑え目の朝食を取って大通り公園を散策した。
ベンチがたくさんあるのにすべていっぱいで、暇そうな方が多いのに驚いた。
千歳に比べると札幌はかなり日ざしが強くて、真夏のようだ。
高い建物もたくさんあって開けた感じだ。

その後、最近人気の「じゃがぽっくる」が入手し易いとこうめさんから聞いた場所に向かった。
運良く後15分で入荷するとのこと。
迷うことなく列に並ぶ。
7・8人はいただろうか。
徐々に列は長くなってゆく。
しかし25分経っても一向に来るようすがない。
40分、45分、とうとう先頭の人が怒り出す。
謝る店員さん、無口になり重い空気になる私たち。
諦めようとした矢先に、やっと「じゃがぽっくる」の到着。
所要時間1時間、長かったあー! 私たちに付き合ってお姉さまたちも並んでゲットしてくださった。

旅の最後に人気回転鮨店の第1位に輝いたお店でたくさんお鮨を食べた。
もう言葉がなかった。
特に私の好みでは焙りサーモンと鯵・ウニ・赤貝が美味しかった。
卵を注文するとその場で焼いてくれるそうで、次回来たときは頼むことにする。
ただ残念なことはシャリもネタも美味しいのに、わさびが全体的にきつめだったのと、お茶がまずかった。
でもみんな大満足で早めに空港に向かった。

この2週間、たくさんの人に遭い、いろんな経験をした。
幸いなことに美味しいものをたくさん食べたのに体重は変わらなかった、精神的には少し太れたかもしれない。

私はなにをやっても5年以上続いたことがないのだ。
でもなんとなくマラソンはいろんな楽しみかたがあり、奥が深いので続けていけそうな気がする。

新たに出遭ったこうめさん、二人のお姉さま、声をかけてくださった方々、応援してくれた仲間たち、ありがとうございました。

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