前日(5月1日)から新幹線で山口に向かうが途中は大雨、新幹線の窓を流れる雨足を見ながら明日からの250キロの行く手の困難さを想像させる。
この頃さくら道に参加の皆さんは一生懸命に走っていた。
山口に到着する前に読んだガイドブックに「大内草鞋」の逸話が有った。
大内草鞋は別名「毛三里の草鞋」と呼ばれて、裏に飛び出している藁がクッションの役目を果たして、3里よけいに歩けると言う!
私は勝手に「毛三里」ならぬ「もう三里」と読んで、これを持てばもう三里(12キロ)よけいに走れるはず、これぞお守りと製造元に買いに行った。
結果は時間内完走できました。
翌年のエピソード
前日の宿で私が「毛三里の草鞋」を持って初参加で完走したことを話すと、同室の皆さんが製造元に買い出しに行った。
一足で3里なら10足で30里ですね(笑)とたくさん買った人もいたとか?
京都のMさんはザックに忍ばせて走ったが残念ながらリタイヤ!
やっぱり草鞋は外に吊さないとだめですね! との談。
その翌年はザックに吊して時間外ながら見事完走されました。
この大会に参加しようと思ったいきさつ
以前から雑誌の大会案内で見ていたのだが、毎年ゴールデンウィークには用事があって参加できなかった。
今年は思い切って申込をしてみたが、大会本部では初参加の方は70キロからお願いします!
250キロはそんなに簡単なものではありません、70キロ、140キロ、250キロと3年がかりで完踏して下さい。
私も初参加で250キロはだめかな?と思っていたら、何とか参加できた。
毎年シュリチンモイ24時間走に参加していたので、24時間で最高180キロ弱を走ったこともあり、
24時間で150キロ走れれば、残りの24時間で100キロ! なんて軽く思っていたわけでは無いが想像以上に辛かった。
【一日目】(5月2日)
昨日までの雨も上がってまずまずの天候、スタートが午後6時なので昼間はゆっくり休めばいいのに観光地巡りをしてしまった。
豪雨の「さくら道」を完走した強者達が16時頃やっと到着、あわてて支度をしているが、私たちとは別世界の人間???
◆18時00分/山口市瑠璃光寺(0.0k)
国宝・瑠璃光寺の五重塔前に全員集合し「エイ・エイ・オー」の掛け声でスタート。
◆西寺交差点(43.9k)
フルの距離なのに以外と疲れる。 これでは先が思いやられそう。
エイドのお嬢さん達と冗談を言いながら暖かい飲み物をいただく。
【二日目】 (5月3日)
◆豊田湖・山本ボート亭(57.4k)
暗闇なので豊田湖も何も見えないが、初めての公式エイド。
◆大坊ダム(75.8k)
日本海に向けて一路下ると左に大坊ダムが見えエイドがある。
エイドを出発してしばらく走るとそろそろ夜が明ける頃だ、日本海側の海岸線にでて安心するが、とにかく疲れた。
まだ100キロにもほど遠い距離なのに、100キロを二回も走ったような疲れが体を包んでくる。
この完踏記は2000年になって書いていますが、実はこの辺りが一番止めたくなる場所でした。
走りながら、「まだ歩けないし」みんなは先に行ってしまうし、遅い私にとっては一番辛いところです。
いつ止めようか、理由は何にしようか、なんて思いながら走っています。(これはいまでも同じです)
◆小田・海湧食堂(86.2k)
ナガーイ日本海の海岸線を走って、やっとエイドに到着。
この辺りが本当に長いです。
◆俵島(97.3k)
ここまでも長いです、きついアップダウン、行けども行けどもチェックポイントがでてこない焦り。
でも始めてのパンチを押すと、やっと ウルトラに参加しているんだ!との実感が湧いてきた。
まだ距離は100キロにも行っていないのに。
◆川尻岬・小田食堂(107.2k)
俵島からここまでも長いです、距離は10キロほどしかないのですが途中で走りながら何度も寝ていました。
突然膝がガクッ!、あわてて体制を立て直す。
ここのカレーライスが美味しかった、いまでも毎年カレーを食べます。
◆シーブリーズ(112.8k)
海岸線にあるレストラン、若いご夫婦が経営している。
◆千畳敷(124.6k)
千畳への登り辺りから、彼氏を車でサポートしているお嬢さんと何度も会うようになった、
顔を覚えてくれて「頑張って下さい」とついでに応援してくれる(笑)
ものすごい登りだが、登りの好きな私には結構楽しめた。 どうせ走れるわけないので早足で歩くことに徹する。
この辺りから辛いときには自分に掛け声をかけた! 「ファイト!・ファイト!」 「がんばれよ!」などなど。
やっと千畳敷に登りましたが、強風でゆっくりできなかった。
◆仙崎十字路
千畳敷からここまでがまたまた長かった!
ずーーと直線で前が見える道路、長門市の繁華街、どれも「もう止めよう!」との誘惑。
仙崎に着いてやっと150キロ、まだ残りが100キロ以上有るのにものすごい疲れ!
◆18時30分(−46分)/鯨墓(152.8k)
鯨のチェックポイントがわかりにくいよ!と言われていたがそれほどでは無く見つかった。
帰路のキャンプ場で最大のトラブル!
突然膝が痛み出した、立っているのも辛いくらいの痛みで、完全にリタイヤを覚悟した。
たぶん暗くなって冷えたのだろう、本当に痛かった。
キャンプ場でバンガローに寝ていて収容車を待つか、仙崎の十字路まで歩いても戻りそこで収容車を待つか?
荷物を置いているので何とか歩いて戻る方を選んだ。
真っ暗のなかを歩くのでラジオを取り出して気を紛らわそうと思ったがなんにも受信できなかった。
膝の痛みをこらえて30分も歩いただろうか? だんだん痛みが引いてきた。
信じられないがゆっくりなら走れるようになって、仙崎の十字路に戻る頃には痛む前と同じに回復した。
仙崎十字路から宗頭までがまたまた長かった。
バイパスと、旧道の分岐がわかりづらいよ!と言われたので、エイドで一緒になった方と3,4人でスタートしたが、宗頭に到着するまでに3軒にのお宅で道をたずねた。
他にも国道で暴走族風のお兄ちゃん達にも道をたずねたが、皆さん親切に教えてくれました。
◆宗頭(174.9k)
やっと宗頭に到着!
暗闇の国道を走り歩きの長い道のりは本当に疲れたが、ここで風呂に入り着替えてやっと落ち着く。
スタート前日の初心者講習会でどんなに遅く着いても良いから、早めにスタートしたら完踏できるよ!と言われたのを思い出し、
せっかく早く着いたんだから1時に出発を決める。
【三日目】 5月4日
1時に宗頭を出発、暗闇の中を鎖峠に向かう。
暗闇と聞いていたので、宗頭を一緒に出た方と話しながら萩市内に向かう。
◆三見駅(187.1k)
立派なエイドが設営してあった。
萩城を見ながら笠山に向かうが、市街地の道がとてつもなく長い!、暑い!。時々帰路の選手とすれ違うのが慰め。
◆笠山(204.4k)
距離はたいしたこと無いが結構な登り!
◆虎ヶ崎(207.1k)
萩の最先端に到着、あとは43キロだ。
まだ7時半で10時間以上有る、余裕と思っていたらさくら道と連チャンのH池さんが食堂に入ってきた。
開口一番、「クニさん、焦らないと時間内にゴールできないよ!」、そんなこと無いはず、まだ時間はたっぷり!
そう思ったが、先達の言葉を信じて食事もそこそこに出発する。
(あとで思い知らされた)
◆東光寺(215.3k)
東光寺は見えるのだが、どこから入るのか解らない。
やっと山門に到着。
山門を入ってチェックポイントを探すがなかなか見つからない。(山門前のガードレールに有った)
ゴールまで後35キロ、もう安心と思ったがH池さんの言葉が気に掛かる。
料金所からはいきなり本格的な山道! これは話がちがうよ! ちょっとあわてる。
◆明木市(226.4k)
他のコースの選手も混ざってのエイドが入り乱れていた。
ここからの萩往還道を甘く見ていた、長々と続く登り道、石畳の山道、 疲れた体には辛かった。
時間内の完踏を完全にあきらめていた。
◆佐々並(235.6k)
名物の豆腐は売り切れ、残念だがしょうがない。
あと14.5キロ、時間は2時間ほど有ったか?(正確では無いが)、いまなら間に合うかも?
さっきまで時間内完踏はあきらめていたが、最後の踏ん張りに挑戦してみようかと思った。
ゴールの瑠璃光寺まで一度も止まらずに走り通した。
途中の板堂峠を下った辺りから、見えない誰かが道案内してくれた。
そこの角を曲がると東屋が有るよ!
国道に出たら右に行くとまた山道に入るよ!
こんな誰とも解らない誘導がゴールまでずーーと続いたんです。
そして、最後の東光寺前の参道に入るまでこの誰とも解らない誘導が続きました。
最後は右に曲がるとゴールが見えるよ! そうしたら本当にゴールが見えたんです
◆山口・瑠璃光寺(250k)
奇跡は起こった!
あきらめていた時間内完踏が出来たんです(47時間47分)
1995年 萩往還 記録 |
ポイント | 通算距離 (km) |
区間距離 (km) |
日付 | 到着時刻 | 所要時間 | 区間スピード (km/h) |
瑠璃光寺 | 0 | − | 5月2日 | 18:00 | − | − |
豊田湖 | 57 | 57 | 5月3日 | |||
海湧 | 86 | 29 | ||||
俵島 | 97 | 11 | 8:30 | |||
川尻岬 | 107 | 10 | 12:00 | |||
立石観音 | 113 | 6 | 12:00 | |||
千畳敷 | 125 | 12 | 14:00 | |||
鯨墓 | 153 | 28 | ||||
宗頭(着) | 175 | 22 | ||||
宗頭(発) | 5月4日 | 1:00 | ||||
笠山 | 204 | 29 | ||||
虎が崎 | 207 | 3 | 7:45 | |||
東光寺 | 215 | 8 | 9:30 | |||
明木市 | 226 | 11 | ||||
佐々並 | 236 | 10 | ||||
瑠璃光寺 | 250 | 14 | 17:47 |