塩飽 里子さんの

2004宮古島100kmウルトラ遠足完走記

2004.3.8 掲載


思い起こせば昨年の6月に行きつけのマッサージ屋さんで堀口さん(kaz師匠)に出会ってからのことでした。ボサボサの頭にTシャツ、Gパンに素足…。これで東京から今朝福山に着いたばかりだという。「まあ〜そうですか」とあたりを見回すと確かに大きなザックを持っている。でも足下は便所でみかけるサンダル…。「う〜ん!これで来たの?」って失礼ながら聞くと、別に何か問題でも?って感じで「はい、そうですよ」との答え。まあ〜飾らないさっぱりとした人なんだわね〜、と思いながら、東京よりいなかの似合いそうな人だなあと思ったものでした。
そして話を聞くうちに、しまなみ海道100kmを走りにこの福山へ来たこと、初めての100kmはあの美しい四万十川のマラソンだったことがわかって…えーと、福山から広島までちょうど100km、JRで二時間、高速を乗用車で飛ばしていても一時間かかってしまう…それを走るなんてうそじゃろ!!!ってたまげていると、なんと昨年はギリシャまで行ってスパルタスロンという246kmものマラソンを完走したっていともさらっと言うし!!
さらにアジアの旅が好きなこともわかり、「面白い人だなあ〜。東京的都会的じゃないのはネパール好きだから?!」などと色々感じつつ、その日は夜、一緒にごはんを食べましょうという事となり、(kazさんの申し出ではなくマッサージ屋の店長から(笑))夜再会して一緒にお酒まで飲みました。
楽しい会話でふと気づいたら23時をまわっていて、明日5時スタートなのに大丈夫!?って思ったりもしてましたが、本人は至って平然。マラソンって万全の体調で臨むよう、前日はピリピリするもんじゃないの?ほんとにこの人明日100km走るの?って思ってたら、なんと翌日95kmでリタイアの報が!私達三人は責任のようなものを感じて意気消沈してました。(実はそんな理由じゃないってすぐわかったんですけどね)
こんな出会いから堀口さん(kaz師匠)のHPを時々見るようになりました。今の私から想像はできないと思われますが、最初はメールすることすらままならなくて失敗の連続で、せっかく長文を入れたと思ったら消してしまったり、その度にブツブツ言ってました。
思えばトランスエゾの時、kaz師匠に台風直撃で大変な思いをしてるんじゃないかしらと思い毎日応援メールした事からうぃぴゃーワールドの罠にはまっていったのではないかしら(笑)。
た〜くさんの純粋さに驚きました。チョモランマさんの完走記、やっしーの完走記、男気N林君のエゾ完走書き込み…そしてもちろんkaz師匠の完走記やスパルタスロンへの決意やたくさんのエッセイ…砂漠のようになってた私の中に「純粋さ」がどんどん流れ込んできて、生き返ることが出来たような気がしました。
さらに掲示板のみんなの生き生きとした魅力的な書き込みを読み続けるにつけ、私もだんだんその世界の中に入りたくなってきました。実際に自分も味わってみたいと。
そんな時にちっちとさり〜さんからの飲んだくれマラニックのお誘い書き込みがあり、「飲んだくれ」にちょいと惹かれて「マラニックってなあに?」と聞いたのが始まりでした。いつのまにか「やってみますか?」「ジャーニーからかな」「いやどうせなら一番最初はレースで確かな勲章を手にしましょう」「僕の大好きな宮古島が最高の景色でおすすめです」となり、自分で「ならばその宮古島に出てみようかね!」と決めました。
ふと気づいてみると当初30kmくらいを走ってみる感覚でしかなかったものが、100kmに挑戦するといった大事件に発展しており(まさにkaz教祖マジック!(笑))、どうしてこんなことになった???と思いつつも、言い出したのにやめたというのだけはイヤダ!逃げたな、とも思われたくない(kaz師匠は「口だけ」って人が一番嫌いで、そういう人間を見抜くのも凄そうで、でまかせ・まやかしは通用しなさそうでした)ってことでkaz師匠に「おすすめするなら完走できるように最後まで導いてよ。言われたことはキチンとやり通すから。まずは何をすればいいん?」と頼みこみました。
(今回も師匠は言ってましたが、僕は無理に誘ったりはしなかったはずだと。あくまで自分がやろうと思ったことを、自分でやり通した結果だと。16時間動き続けて、自分の足でたどりついたことを誇りに思っていい、と…。)
9月8日からでした、練習を始めたのは。まずは30分でいい、毎日体を動かしつづけるように、と。2週間まではきついけど、だまされたと思って歯をくいしばって頑張れと。必ず楽になるから。そしたらそこから完走するためのトレーニングスタートだ、と。
高校の時にテニスをやってたくらいで、何かきちんと走ることなどしたことがなかった私にとって、走っていくことが続けられるかどうか、息が続くかどうか、不安が一杯でした。やるからには教えろと言った手前、途中で走ることに飽きちゃったりしたらどうしよう。ある意味、私にはその事も大きな心配の一つでした。
そんな私にkaz師匠は「速く走る必要なんてないんです」「アスリートじゃない僕らには息が切れてしゃべれないスピードはすでにオーバーペース」「10km、20kmを速く走ったところでそれは100km初心者の完走への練習じゃない。大切なのは5時間6時間10時間動き続けられるかどうかです」と言ってくれました。「練習で毎日ぎりぎりまで追い込んでたらとてもじゃないけど続かない。嫌いにならないためにゆっくり楽しみながらやるんです。散歩の延長」とも。
「速く走る必要はない」…それはかなり私にとってのハードルを低くしてくれました。
初日は息子と走りました。家でゲームしてるより母さんと一緒に走ろう、と。まず周回コースをつくって5km、その息子も3日目にはつぶれて、師匠には笑われてしまいました。足は痛くなるし、9月で暑い!仕事を終えた後、ごはんを食べさせて走る!遅くなります。早くても9時頃から。遅い時など11時くらいになっても「3日空けちゃダメです。まずは続けること」という師匠の言葉通りに。
仕事柄どうしても遅くなること、突発的な事など、いろいろ起こります。生きてるんです!何があってもおかしくない。でもそれに支配されていると自分でやろうと思うことすらできなくなります。どこかで振り切る勇気を持たないと。
kaz師匠は「忙しくて練習できないなんて、その時点ですでに敗者となってる人の言い訳に過ぎない。本当に宝物を手にしたければ睡眠時間削っても練習したくなるはず。慣れればそれが日常になる」と言ってました。
予定がわかってる時は早朝から走ったり、真夜中だけどなあと思っても、よっしゃ行ってくるか、と体力をつけることだけは手を抜いてちゃできない。まずは自力で100km移動するだけの体力が最低でもないといけないなと思いました。
9月が85km/月、10月が150km/月、11月が250km/月、12月〜1月が300km/月とkaz師匠の宿題だけはなんとか走り込んで(12月は腹筋も)、気持ちだけはスタートラインに立ちました。
1月9日8:15羽田発沖縄行き。
いよいよ私のウルトラ挑戦が始まりました。
Kaz師匠、やっしーくん(矢代君)、まっしーくん(増本くん)、ムラムラさん(村嶋さん)、みんみんさん(岡部さん)、そしてどこからみてもチグハグな感じのおばちゃんの私を加えた一行の珍道中は想像以上でした。
出だしからkaz師匠は空港でチェックにかかり手荷物をすべて調べられるし、やっと乗り込んだと思ったらみんみんさんがチケットを入れた荷物を預けちゃってて乗り込めないし、なんともきちんとした人達だけにおかしさが漂っていて笑ってしまいました。
わきあいあいとした中で宮古島到着!ホテルに着くとロビーが受付会場になっていて、すぐにエントリーを済ませ、あ?始まるぞ?と身の引き締まる思いがしました。
そんなところに海宝さんが来られ、kazさんからムラムラさん、まっしーくんとともに今回のウルトラ初挑戦者と紹介してもらい、握手。ぐりぐりっとした大きな目の海宝さんの手はとってもがっちりしていてたくましく、あたたかい感じがしました。
前日にはのんのんさん、Rinさん、こうゆさん、らびっとさん、大食いちゃん、みんみんさん、師匠、私と初の顔合わせとなる方もある中、楽しい壮行会まで開いていただいたり!Rinさんはみんなのためにスノーボールのクッキーを焼いてくれてもう大感激!仕事の都合で参加できなかったメンバーのために持ち帰り、空港でお茶したときに決意をこめて食べました。Rinさん、おいしかった?ほんとうにありがとう。
話は前後してしまいましたが、会場に着いてから華やいだ大会への興奮というよりちょっと宮古にリゾート?って感じで、さっそく平良市内に沖縄料理を食べにくりだしました。ソーキもてびちも海ぶどうもおいし?い。はじめての沖縄、宮古島に気分はもうトロピカル!
ワイワイとおいしくいただいてる最中に、kazさんのケータイへなんとのんのんさんから私宛てのメール。レースに真剣に向き合ってるのんのんさんからの言葉に私は心臓がバクバクして涙が止まりませんでした。「強く欲しがれ!」と。
その後、師匠ご推奨の竜宮展望台に行った後、ホテルに戻り、少し遅れて前夜祭に参加、すぐビンゴ大会となり、6人のチームでなんとやっしー一人がビンゴ!半数の人に当たるよう確率は1/2と言われていたのに私たちのチームってそうしてこんなに当たらないの?運でなく実力主義?そんな楽しい雰囲気の中であまり緊張することなく、その日は眠りにつきました。本当に明日は走るんだよね?と思いながら。ましてCW-Xをはいて(笑)。
翌日早朝3時、食事を済ませ、適度な緊張でちょうど心地よい感じで会場へ入りました。
ざわざわとした中、 kaz師匠は色々な人に挨拶したりビデオをまわしたり忙しそう。その中で今回初の100km挑戦だと私とムラムラさんまっしーをいろんな方に紹介してくださり、にこにこ挨拶しているうちに、準備体操のエアロビが始まり、みんながすーみんさんみたいな人だねえっていってしっかりストレッチした後、いよいよスタート。海宝さんの熱いスピーチを聞きながら、「よ〜し、絶対に帰ってくるぞ〜!」と固く決意しました。
5kmごとの距離表示が来るたびに「わあ、体が軽くてまだ大丈夫だ」と不思議、不思議。私にはタイムとかラップとかよくわからないけど、師匠のペースに従いエイドを目指して一つ一つクリアしていく感じで…。エイドに協力してくださってるボランティアの方たちに感謝しながら、kaz師匠のHPで出会った感動の世界に今私は参加してるんだわ〜などとおかしなことを考えながらのランでした。
そんな時、前方の人から「あっ蛍だ!」という声が聞こえました。ふと立ち止まって茂みの中に目をこらして見ると、小さなホタルがしっかりとした光を放ちながら飛んでいます。私にはたくさんいるようにも、またその一匹しかいないようにも思われました。ほんの数秒の間の出来事でしたが、なんと!そのホタルはす〜っとkaz師匠の足にとまったのです。これからの長いみちのりを行く私たちに「ガンバってね」とでも言ってくれてるかのように。二人で笑いました。
その後どんどん進み、素晴らしかったのは、池間大橋!きれいな海、海にかかるやわらかなまっすぐの橋、青い空、白い波…すっご〜い!!きれ〜い!やったあ〜って気分でランランラン。このころの私って本当に元気でした。まだ走っていました。
さとうきび畑だけの池間島を周回して、橋の手前のエイドで汗とほこりで汚れた手と顔を洗い、気分を引き締めて師匠、ムラムラさん、私とぴったり3人、一度も止まらないで激しい向かい風の中、橋を走り抜けました。今回のウルトラで唯一走ったなあと感じるのはこの橋だけですね。その時の記念に残る一枚の写真も手にしました(笑)。
そしてkaz師匠が「ここがだいたい42. 195kmです」と言った地点。時間は5時間25分。「ね、フルなんて余裕でしょ?」師匠が笑いました。確かに結構楽でした。でもこのへんからいよいよつらくなってきました。
そして48km地点の大エイド。さとうきび生絞りジュースがふるまわれてました。着替えとかマッサージクリームとか飲み物、色々と置いていたけれど、全て忘れて座り込みました。やっしーが持って来てくれたおにぎりとお汁を飲み、少し休憩させて〜と思ってると、師匠から「はい、休みすぎ。支度、支度」との指示が。えっ〜とばかりあわてて身支度すると、トイレもすませて後半戦へ突入。
しばらく走っていくうちにくるぶしのあたりにへんな違和感を感じ始めました。さっきのエイドで無防備にやれやれと座った時に右あしをちょっとくじいたらしく、ピキンピキンと痛みを感じるようになりました。その頃師匠に「エイドが少なくなってるのかな、このあたりは?」って聞くと「いえ、単にスピードが落ちてるだけです」とまあ〜そんなおっしゃるとおりという答え。確かに50km過ぎたあたりからぼちぼちと足があつく感じ痛くなってきました。
次の坂まで頑張るようにとか、ガードレールが切れるところまで走ること、とかいけるとこまで、とかその都度その都度の師匠の目標設定の指示に応えながらひたすら進みました。その頃にムラムラさん、師匠、私で走っていて登りではなんとかついていけるのに、くだりになるとみんなから少し遅れることに気づきました。下りが私極端に弱い…。
比嘉ロードパークでは西野さんからビールエイドの方を紹介していただき、本当につめた〜くなったビールをコップに一杯ぐい〜と飲んで、目も覚めてうまかったです〜。西野さん、熊谷さんありがとございました〜。
この勢いを借りて、といいたいところですが、そのころの私はしっかり手を振らないと足が前に進まず、おいっちにおいっちにとかけ声をかけながら前へ前へというのが精一杯でした。
東平安名崎…すご〜くきれいな遊歩道をピョコタンピョコタン歩いていると、そんなところで会うとは思っても見なかったみんみんとまっしーの二人。あーなんかあったんだと思うと同時に師匠から「里ねえはこのまま行ってください。僕が見てきます」と指示!「はい!」と答えて、みんみんとまっしーに手を振ってあいさつだけして先を急ぎました。こんな残り35kmあたりで残っているはずのない二人が、どんなにくやしかろう、どんなにはがゆかろうと思うと、悔し涙が出てきて、おばはんこんなところでオロオロしてる場合とちゃうで、kaz師匠に言われるように頑張らんかい!と自分を叱咤激励しました。
おかしなもので一人で走っている間にボロボロ泣いて、灯台の下のエイドでおいしいジャムを乗せてくれたクラッカーを食べ、kaz師匠ご推薦の東平安名崎名物「シークワーサーシャーベット」アイスを食べると、さっき泣いたカラスはもう幸せな気分だったりして。私ってゲンキンなやつだよなあ、と笑いました。「この先からが本番ですよ」と言った師匠の顔はマジで、「大丈夫です。予定通りです」と言われつつも、あまり残り時間はないということは伝わってきました。
東平安名崎に別れを告げ進んでいると、はるか前方にムラムラさんが道ばたに倒れたものを見て何か気にしている様子!あっ、またなにか起きたと近づいてみると、やっしーが道ばたに倒れて「気持ち悪い〜、はきそう」とうなってます。
いつものごとく師匠からは短く「あ、里ねえは先行ってください」と言われ、「ハイ」この繰り返し。私には本当に余裕はありません。まっしーの時もやっしーの時もそばに行くこともできず、頑張れっとエールを送ってまず自分のことからって感じです。
これはずっと師匠から言われてたのですが、何度も完走してる自分が道連れになってリタイアするのならいざしらず、初完走が目標の人が共倒れというのは絶対に避けねばならないんだということ。万が一道連れになったら道連れにしてしまった人の気持ちはどうなります?それを考えたらそれは絶対にできないはずだ、その人の想いを自分が何が何でも一緒にゴールへ連れていくんだという気持ちになれ!と。その人のためにも自分だけは完走しなきゃならない、と。
山男であるkazさんらしい言葉でした。
振り切る勇気、いろんな意味でもウルトラというのは本当に厳しいものなんですね。それより今の私には人の事に口出し出来るような余裕は全然ありません。だからそんな私から得ていただけるものといったら、おばちゃんはあきらめんからね、頑張って先行くからね、といった姿をみてもらうのが精一杯の事でした。
東平安名崎を過ぎてからのすさまじいアップダウン!アップで歩いてダウンはランと計算していた師匠の予想をくつがえし、走れません…。どんどん歩幅は短くなるし、リズムも刻めない、なにしろ私のランは師匠の歩きなんですから…。それでも師匠は「大丈夫です。いい感じです」と言ってくれる。なんとかして歩幅を大きくしたい、リズムをつけて走りたいと思いながら、必至でした。後ろを向いて師匠に手を引いてもらいながら下ったり、ウォーキングの時も出来るだけ手を大きく振って歩幅をかせぐとかしていました。
ドイツ村手前のゴルフ場のコースのような景色のところは、ブーゲンビリアがきれいで素敵な所でしたが、道路にはみ出している花をよけきれずに、バスッバスッと花にぶつかってしまったり、何をしとるんだろうといった顔で師匠が振り返るけど、右によろよろ左によろよろと足元は自分で思うようにコントロール出来ていませんでした。
ここからが「ワイドー坂」といって今日は行かないけど明日は僕の走りでは1番きついところなんですよ、と言っている師匠の声も聞けても振り向くこともできません。きっとこの頃から暗くなりだしてきたこともあり、私が真ん中を走れず脇に脇に行って危なっかしいので、師匠に手を引いてもらって走っていたように思います。これがまた本当に私には好都合で、連れていってもらえる=眠っちゃおうみたいな、なんとも自分勝手なヤツでした。
でも道端のキリ株が子供をあやしているセミロングのきれいな髪のお母さんに見えたり、いないはずの女性が行ってはいけない方向にず〜っと走っていくような気がして、「あ〜間違ってる!!」って叫んだりしたようなに思うのですが、後で聞くとかの冷静なる師匠は「そんなことありました?」と言ってました。まったく!信用ないんです。
こんな頃、80kmでまっしーがリタイアしましたと言い残して走り去って行った黒みんみんはとってもたのもしく素敵でした。
あと10kmあたりまで迫ってたものの、気持ちが切れそうになって動けなくなりつつあった私は、師匠に強く「のんのんさんからのメールがあっただろう!完走したくないのか!欲しくないのか!」と言われ、「完走したいよ!欲しいよ!」と叫び、絶対にリタイアはしない、制限時間の1分前でもいいからはってでも行ってやると思いました。でも師匠は残り距離は教えてくれるけど、残り時間は「いいから」といって教えてくれない。どうせ聞いてもペースアップできるわけもなく、全て師匠におまかせ状態でした。
やめようとか思わなかったかと後日どこかのお店でおばさんから(誰だか忘れちゃったけど!)聞かれたけど、本当にやめるとは思わず、早く帰りたい、ゴールしたらこれが終わる!と思ってました。そばにはずーっと師匠が離れずにいてくれるから不安も全然なかったし。水風呂に入るぞとか、寝てやるとか、なぜかうどんが食べたいって思ってました。すご〜く長い間水以外何も食べれなくて先ほどからおなかがぐーぐー鳴ってるし、帰りた〜いと思ってました。
最後の難関、来間大橋が長〜く感じました。その時、橋の前方高い所でひとつ流れ星がす〜っと流れたのです。「あっ!流れ星だ!見えた?」の師匠の声に、「うん、見えたよ」と答えながら、お星様!ぜーったい完走しますからね。見とってね。それからなぜか母の事を思い出し「お母ちゃん見とる?里子は頑張っとるよ。絶対に負けたりせんけんねえ」と…。
橋の上で釣りをしてる人達の道具を踏まないよう気にして進んでると、前方からまたみんみんが元気そうにかっとんできました。kaz師匠からビデオを受け取り、「ゴールで待ってますからね〜」と言い残して走り去りました。なんと素晴らしい勇姿…。
でももうこの時点ではほんとに精も根も尽き果ててて、最後の登りは師匠の肩を借りての歩きでした。途中やっしーとムラムラさんに会えて、ゴールで!と約束して別れました。あとはただ師匠の手をぎゅっと握って引かれながら、ひたすら歩きました。
あと2km、1km、500m…あっ東急リゾートだ、みんみんがいるね(でもそれは木だったり!)、確かのはkaz師匠の手の暖かさ、ぬくもり。
宮古島東急リゾートの門を入り、ななめに歩いていくとみんみんの元気な出迎え。kaz師匠も「よく頑張ったね。ほらあそこがゴールだ。宝物があふれてるよ」と。汗と涙とほこりでぐちゃぐちゃの顔で、出迎えてくれる人達一人一人の顔を見ながら、あ〜、帰ってきたんだ!完走できたんだ!と体の奥の方からすっごく熱いかたまりのようなものが突き上げて来ました。
ゴールテープの向こうにみんみんやムラムラさん、やっしーの顔、それに海宝さんの大きな体が見えて、146番、172番!と私と師匠の番号をコールされ、両手を高く上げて師匠と手をつないで
15時間43分22秒 ゴ〜〜〜〜ル!!!!
やったあ〜!やったぞ〜!!100kだああ!最後は歩き倒しだったけど、なんとか時間内にゴールできたぞぉ〜!うわぁ〜ん!ありがとうみんな、ありがとうありがとうkaz師匠〜〜!!!
よくもまあこんなおばさんを最後の最後まで見捨てずにここまで引っ張ってくれて…。
うぇ〜〜ん。
もう誰の顔を見ても涙、涙、涙。み〜んな泣いてる。
師匠ががっちりと抱擁してくれました。耳元で「よく頑張ったね。すごいよ。素敵だよ。」と。う、うれしい…。
みんみんがカメラを向けてくれても涙と鼻水が混じって子供のように泣いてしまいました。人前でこんなに無邪気にありのままの感情を表現できるなんて思ってもみなかったから、自分で自分がかわいいところあるじゃんとじーんとしてしまいました。
その後、パンを食べまくって、翌日のワイドー100km参加のkaz師匠とやっしーをちょっぴり心配しながら(私のせいでもうあまり休む時間がない!)部屋に帰りました。まずは水風呂につかりたいと年の功で先に入らせてもらったんだけど、はじめ水にしていてだいぶ氷でも冷やしたからもう少しあたたまってから出ようかとお湯を足していたらいつのまにか寝てしまいました。
ムラムラさんが静かになった私を気遣って声をかけてくれたらしいけど、返事も無いのでのぞいてみたら息は出来そうなものの鼻のあたりまでとっぷりと浸かって浮いているので「里ねえ!大丈夫?!」とゆり動かして起こしてくれました。「えっ!寝てた!?」もうそんな感じでお風呂から出るまで少し静かになると次はみんみんが「里ねえさん、大丈夫?!」と駈け込んでくるといった感じで、本当に最後の最後までお騒がせなことしてしまいました。
以前やっしーのサロマ完走記にそんなくだりがあり、ちょっとおとぼけでかわいいなあと思いながら読んでましたが、まさか自分がそんなことになるとは思ってもみませんでした。
Kaz師匠のおかげもあって、走るってこと、何の力もない自分がとにかくあきらめなければ、なんとしてでもやめずに前へ前へ進んで行けば、ゴールは絶対にあるという事を身をもって知ることができました。師匠の言ったとおりです。
走りながら「もう走らんぞ〜」「私には合わんなあーこんな事」とかずーっと思っていましたが、次の日にはもう「今度はなんとか最後まで走れる足にならんといけんなあ」とか「16時間以内の完走だけど、師匠の設定は15時間だったんだから未達成やなあ、なんとかリベンジせんといけんわあ!」と思ってる自分がいるのです。100km2日目の師匠の死闘をまのあたりにしてますますその思いは強まりました。
Kaz師匠のHPにひょっこりやってきて、皆さんと知り合いになれて…。なぜだかずんずんずんずんはまりました(笑)。師匠に魔法をかけられたようです。6月のあの日、出会えて本当によかった。
師匠のまわりの人達も本当に素敵な人ばかりです。顔が一人一人浮かびます。きつくてもつらくても終われば最高の笑顔でした。みんな素敵です。
本当に五十路の青春!はまってしまいました。これからも素敵な出会いをしていきたいです。師匠、見捨てないでくださいね(笑)。Kaz師匠、本当にありがとう。みなさーん、これからもよろしくお願いしまーす。がんばりまーす!!

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