かすみがうらマラソン2006
=クニさんのhearty&fantastic伴走=

千葉県:荒谷惇子さん(2006.05.19掲載)


★その1 スタート15分前のゆとり

家から30分の西船橋でサブ伴走のみやちゃんと待ち合わせをしてもらったので ゆっくり朝食をとり土浦に向った。1年前 買ったばかりの携帯電話を握り締め サブ伴走のSさんと会うため上野駅にいた自分を思い出す。初フル挑戦の日だったのだ。

1時間ほど前に受付をすませて トイレに行こうと思っていたが 込んでいる様子なので 先に着替えをした。友人達に挨拶をしているうちにもうスタート時間が迫っていた。

受付の仕事を済ませ「遅くなりました」と言いながらクニさんが近付いてきた。去年に引き続き伴走を引き受けてくださったのだ。その声を聞いた時から 私の時計がゆっくり動き出したような気がした。スタート15分前だった。

スタート付近は 大勢の人の声で騒然としていた。「ここのトイレより本部あたりの方が沢山あるのでそちらへ行きましょう」と言われ 私とみやちゃんはロープを持って後へ続いた。急ぎ足で木の間を近道しながら「間に合わなければスタートして 去年寄ったコンビニに入ればいいですね」と私は落ち着いて言った。もう一人の自分がいるような不思議な気持ちだった。

案の定列がいくつも出来ていて やはり無理かも知れないと思った。「この列が早そうだな」と言って 迷わず並んだクニさんに「並んでいる人の顔を見て分かるの?」と聞いた。(笑) 数が多いので トイレのドアが開くたびにさっと走っていく。どんどん列は前に進んで行った。
「これって何だか もぐら叩きゲームみたいですねえ」とまた私は馬鹿な事を言った。(笑)

先にトイレをすませた私は水の場所が分からない。待っている人に悪いなと思いながら 大声を出すのは恥ずかしかったので ちょっとドアから顔を出して小さな声で「みやちゃん」と呼んでみた。すぐ飛んできてくれた。左下にレバーがあったのだ。

もう一度スタート地点へ移動した。
「10マイルの人がスタートしましたよ。ちょっと応援してくるから ここで待っていて下さい。」「私の分も応援して来てね。」クニさんは垣根を飛び越して行った。

ゆっくり歩いて 狭いところを通りぬけ スタート地点の列に入り待っていた。去年 体をよじるようにしてこの場所を通った事を思い出した。
ロープの先を伴走者に渡し「よろしくお願いします」と 神妙に言った。スタート5分前だった。
すごいラッシュ状態。「ここは4時間半完走予定の並ぶ所。前に並んでも抜かれて危ないからゆっくり行きましょう。これは無駄ではないのですよ。ちょうどアップにもなります。最初は腕を持ちましょう。」
ゆっくりスタートラインを踏んだ。

私はまた1年前を思い出していた。救急車の音がスターと直後から聞こえ 「こんなに早く具合の悪くなる人がいるの?」と緊張しながら質問をしていた。
とても賑やかで暑くて まぶしかった。今年は今にも雨がふりそうで涼しく そして静かなスタートだ。後数キロ地点か?
「雨で出場者が少ないのかしら。」
「そんな事はないでしょう。」

私の精神状態が去年と違っているから そう感じるのだろうか。不思議だ。
1キロすぎた当たりで「ロープを使いましょう」と言われた。
今まで腕を持って走っていたことを忘れていた。

「今年は 僕の話をちゃんと聞いて下さいね」と 伴走者が笑いながら言った。ああ 痛い事を言われた。去年は 15キロ当たりまで興奮しておしゃべりをしたり歌ったりしていた。さすがの伴走者も強い口調で注意したが私はあまり気にもせず走り続けていた。伴走者の大事な言葉を聞き逃したかも知れなかったのだ。今年は約束通りおしゃべりをせず 話を聞き 自分の気持ちを正直に伝えた。
風邪気味なので 薬を飲んだこと。そのため後半は眠くなるかも知れないこと。
5時間くらいで無理をせず完走すること。
伴走者と同じようにゴールラインを正確に認識したいこと。

「眠たかったら寝てもいいですよ。ゴールはご希望に沿うようにしましょう。」

その2に続く


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